東洋の心を語る

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頁數:76頁

時間:2019-06-10

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1、東洋の心を語る①開かれたこころ                       東方學院院長 中村  元(はじめ)明治四四年島根県松江市出まれ。日本を代表する哲學者、仏教學者。在家出身でありながらも、仏教思想にとどまらず、西洋哲學にも幅広い知識をもち思想における東洋と西洋の超克を目指していた。東京大學卒業(yè)。長く東大教授を勤める。東大教授退官後は、財団法人東方學院を設立。一般への東洋思想の普及にも盡力した。また比較思想學のパイオニアとして、比較思想學會も創(chuàng)設した。サンスクリット語に精通し、仏典などの解説に代表される著作は多數にのぼる。わかりやすい翻訳や解説には定

2、評がある。東京大學名譽教授、日本學士院會員。平成一一年死去。                     駒沢大學教授 奈良 康明(やすあき)昭和四年東京生まれ。昭和二七年東京大學文學部印度哲學梵文學科卒。東京大學大學院人文科學研究科インド哲學専攻修士課程修了。カルカッタ大學大學院人文科學研究科比較言語學専攻博士課程修了。文學博士。駒沢大學仏教學教授となり、平成六ー一○年學長。のち名譽教授?曹洞宗総合研究センター所長、法清寺住職。著書に「仏教史1-インド東南アジア」「ラーマクリシュナ」「仏教の教え」「釈尊との対話」ほか16奈良:最近世界的に東洋文化とか、東洋の

3、思想というものが大きな関心を持たれております。たしかに従來西歐的なものの考え方とか、西歐文明というものが、言うなれば歴史の主流を占めていた、ということは言いようかと思うんですが、それが現在さまざまな理由から見直しを迫られている。そうしたことの関係から東洋的なものが見直されてきている。そういう時代であろうかと思いますし、この傾向は今後も続いていくだろうと思われます。そこで東洋的なものとは一體何なのか。特に東洋というものはよく西歐のものに対して、「心というものが主體である」というようなことも言われるわけなので、「東洋の心を語る」ということで、今月から毎月一回い

4、ろいろと考えていってみたいと思います。お話を頂きます方は東方(とうほう)學院院長の中村元先生でございます。先生、「東洋の心を語る」ということで、本日その第一回の「開かれたこころ」ということでございます。なんか「開かれた」とか、「開く」と言いますと、私はとってもちっと明るい感じがするんですね?!溉欷皮い康坤_かれた」とか、「胸襟を開いて語る」とか、「わだかまりが消えて心が開く」とか、その時その時の一つの心の一時(いっとき)の動きなんでしょうけれども、例えば「真理に目が開く」とかいったような使い方もございますし、「テーマが開く」ということでございますので、

5、一體「開く」とか「開かれた」というのは、一體どんなものなのか、その辺から少しお話を伺いたいんでございますが。中村:「東洋の心」ということを問題にします時に、「開く」とか「開かれる」ということは非常な意味を持っていると思うんであります。この我々自分の生きている姿を反省しますと、どうかすると、「心が閉ざされている。あるいは偏見に閉ざされている」というようなことが無意識のうちにございますね。なんかの時にそれ気が付くわけです。そこでパッと目を覚まされる。目を開く。あるいは人によって目を開かせられる、と。〈あ、ほんとにそうだったな〉とこう思うことがございます。それに

6、よって人間の內にある尊いものに気が付くようになる。だから東洋の心と致しましては、「開く」とか「開かれる」というのは非常に重要な意味を持っていることだと思うんでございます。これも昔から東洋の文化で常に言われていたことだとは言えないのでありまして、ある時代には知識が閉ざされていた、ということがございます。それに対して、ハッと気が付く。そこで眼が開かれるわけですが、仏典によく出てくる言葉でありますが、「開発(かいはつ)」と世間で申しますね。「知能を開発する」とかなんとか、奈良:「開いて発する」という、よく「開発」という言葉を一般的にも使いますですね。中村:あれは

7、仏典によく出てくる言葉なんです。もう既にインドで使われて、漢訳の仏典に出てくるんですが、つまり人間は內に尊いものを持っている。それを他の人が慈悲の心を持って伸ばしてくれる。その場合にも、「開発(かいはつ)」―仏典の読み方ですと「かいほつ」と読みますが―あるいは特に誰かの力を借りなくても、內にある可能性が何かの場合にパッと開かれて発展する、という場合もございますね。それも「開発」「かいほつ」と申しまして、仏典にも出てきますし、それから弘法大師もよく使われております?;颏い仙徣?れんにょ)上人の『御文(おふみ)』なんかにも「宿善開発(しゅくぜんかいほつ)」とい

8、う言葉がございます。昔から功徳を積んで善いことをしていた。それが可

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